MENU

「宅建業界・制度の変化」


中古住宅市場は、制度の見直しによって大きく動き始めています。これまで宅地建物取引業者(以下、「宅建業者」と言います。)が敬遠してきた低価格帯の物件も、報酬規定の改正によって市場に出やすくなり、流動性が高まっています。

今回は、その背景となる宅建業界の制度と、令和6年の法改正による影響について整理します。

目次

中古住宅市場と業界の事情

 不動産業のうち、顧客の依頼に基づき売買や交換の仲介、複数の不動産を不特定多数の相手に対して売買を行う場合、宅地建物取引業(以下、「宅建業」と言います。)の免許を必要とします。その免許を取得した者が宅建業者になります。

 宅建業者が顧客に対して請求できる報酬には、宅建業に関わる法令による制限が課されています。それは、取引される不動産物件の価格に対し、一定の割合までしか請求してはならないというものです。この制限が、中古住宅市場が活性化しなかった状況を作っていたと考えられています。

 物件の価格が1億円と1000万円とでは、宅建業者の媒介報酬は10倍も違ってしまいます。しかし、媒介する宅建業者の手間はそれほど違うものでしょうか?高い物件は価値が10倍なので、責任も10倍で、取り扱う機会は逆に少ないと思います。新築物件に限ればより高額な取引の場合は、その責任も価格に比例して大きくなるのは納得できますので、報酬が増えるという規定は妥当適正と感じます。しかし、逆の場合もそうでしょうか。長期に渡って住む人がいなかった空き家、廉価(特に安い)な中古物件取引の場合はどうでしょうか。廉価だからと言って責任は価格に比例して小さなもので済むのでしょうか? 

 宅建業者はほぼ利益を求める営利事業者です。儲からないことをやっては非効率です。非効率なことをするのは経営者としていかがなものでしょう?儲からなければ、例え社会のためになっていても事業は長く続きません。なぜなら、儲からなければ人件費に充てるお金ができず、そこに従事する人の生活も不安定になってしまうからです。事業や生活が不安定になると、やる気にも影響して次第にサービスの質が低下することにもつながります。どんなに世の中の役に立っても継続できる=儲かる仕組みでなければ続かなくなるのです。

 結論として、経営者としては高い物件の取引に注力して、安いまたは安すぎる物件には関わらないのが賢明な経営判断といえるでしょう。そうして当然の帰結として、価値の低い不動産は市場に出ることもなく老朽化して負の財産となってしまったのではないでしょうか。

令和6年の制度見直し

令和6年6月21日交付、同年7月1日施行の宅建業法第46条についての国土交通大臣告示により、物件価格が800万円以下の低廉な空き家等にかかる媒介報酬上限は特例で33万円(税込)に見直されました。これは、宅建業者の中古住宅の売買の仲介に伴う仕事の量と責任の大きさを踏まえて、どんなに安い物件であっても税込み33万円までは請求することを特例として認めるということです。言い換えると、その程度の報酬を保証しなければ、宅建業者としては仕事にならないと国が認めたとも取れます。以前から200万円、400万円、800万円でそれぞれ区分され、報酬基準(宅建業者が請求できる媒介報酬の上限額の計算式)が告示されていてそれは今も有効です。あくまでも特例なので、契約する人が宅建業者との媒介契約時に報酬額について合意した場合に限ります。

 この制度見直しによって宅建業者は800万円以下の物件に対する媒介報酬は、顧客からの同意を得た場合には最大33万円を請求できることになりました。

・原則計算における、物件価格800万円の場合の報酬額に相当
・計算式(物件価格×3%+6万円)×1.1倍
・(800万円×3%+6万円)×1.1倍=(24万円+6万円)×1.1倍=30万円+消費税=33万円

制度見直しによる中古住宅市場の変化

宅建業者の媒介報酬上限見直しから約1年6か月を経過した令和8年1月現在、日本の中古住宅市場はどのように変化したでしょうか。大手の不動産ポータルサイトなどで1000万円未満の中古住宅を検索していただければ一目瞭然です。恐らく500万円~800万円の価格帯の中古住宅情報が多数掲載されているのではないでしょうか?と同時に、300万円以下のような以前なら空き家バンクでしか見なかったような物件も多数掲載されていませんか?

これまで宅建業者が控えていた低廉な中古住宅の取引に動き出したことが明白です。この動きによって空き家問題が徐々に解消していくことに期待したいところです。不動産価格は地域格差が大きく、また、中古住宅は土地の価格比率が大きいので、低廉な中古住宅戸数は都会よりも地方の方が多く市場に出てくると予想できます。

低廉な空き家購入検討時の注意点

 800万円以下の中古住宅を見ると、そのほとんどは「現状有姿引渡」になっていると思います。現状有姿引渡とは、中古住宅のそのままの姿での引渡しということです。つまり、修理、補修、リフォームやリノベなどがされていない現状そのままでの引渡しです。また、空き家の内外に家財道具などが残されていて、その処分も買主負担という場合もあります。場合によっては、欠陥があり安心して住むには補修が必要な場合もあります。つまり、残置物等の撤去、草刈り、補修、リフォームなどが必要になるということです。購入して入居される前に手間と時間と費用がかかるということは見逃してはいけません。低廉な中古住宅を購入し、実際にお住まいになるまでどのくらいの手間と時間と費用を要するのか宅建業者とよく話し合い計画を立てましょう。以前では空き家バンク以外の市場に出ることのなかった欠陥住宅も掲載されています。解体前提で土地価格から解体費相当額を差し引いた格安の物件は恐らくそういった住宅です。法律上、欠陥のある住宅、住むことすらできない物件でも広告または紹介時にその旨を解り易くはっきりと表示したうえで、重要事項説明でも詳細を説明し、その証明書等を交付し、売主買主がその目で直接確認し、契約条項に責任について明記の上、それを理解承諾して合意していれば法律上は契約として問題ありません。

 見るからに腐っていて悪臭を放っているような「危険極まりないりんご」でも、売主が食べないでくださいと明示し、買主の購入目的が公序良俗に反しないこと、売主に責任がないこと、購入後の責任は買主が持つことに承諾合意があることを書面で証明できれば売買しても法律上は問題ありません。実際に食べてしまっておなかを壊しても、加工して第三者に提供してしまっても法律上は買主の責任になります。色々な危険を伴うだけに、とても回りくどくて面倒な契約になりますね。そんなりんごをどうして売るのか、何のために買うのかとても気になるところです。法律上の問題になった時は、「何のために買うのか」をあらかじめ伝えたか、知っていたかが問題になります。同時に、「どれだけ危険な状態か」を売る人も買う人もどれだかわかっていたかが問題になります。

 宅建業者はその回りくどくて面倒な契約を、りんごより重要で重大な不動産に置き換えて仲介手続きをします。売主と買主の両方が間違いなく問題点を理解承知していて、取引の条件について承諾と合意があって、責任の在り処がはっきりしていることが大切です。宅建業者には、それらを無関係な第三者からでも判るように、重要事項説明書や売買契約書その他添付資料等によって、契約内容を証明して仲介する責任があります。

現状有姿引渡の購入者側のメリット

 800万円以下の中古住宅はリフォーム等がされていないのがほとんどです。しかし、それ自体が購入者のメリットにもなります。中古住宅の状態や構造にもよりますが、予算内である程度自由にリフォーム・リノベーションができるというのが価格を超えた最大のメリットかと思われます。特に、キッチンやトイレ、バスルームと言った水周りは居住者の好みやこだわりが大きく反映されるところです。壁紙や外壁のデザインはもちろん、間取りも予算次第で変えることができます。※新築ほどの自由度はありません。また、DIYリノベを推奨する意図はありません。

 また、買取再販物件と大きく違う点があります。それはリフォーム等の施工業者も選ぶことができる点です。入居後に欠陥や不具合が見つかった際の責任の所在や、計画や施工の問題点が明確になり易く、もしもの際の相手方を特定しやすいのは安心に繋がります。

制度の変化は、中古住宅を選ぶ人々に新しい可能性を開いています。低廉な空き家も、工夫次第で「自分らしい住まい」へと再生できる時代になりました。

出典一覧

宅建業法・制度改正

中古住宅市場情報

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次